乳がんにも「免疫チェックポイント阻害薬」、厄介なトリプルネガティブでも有効か

治療が難しく厄介ながんと知られている、「トリプルネガティブ」と呼ばれる乳がんに、新薬候補が有効である可能性が出てきている。「免疫チェックポイント阻害薬」というタイプの薬の初期段階の治療成果がこのたび報告された。

厄介な「トリプルネガティブ」

米国のジョンズ・ホプキンス大学を中心とする研究グループが2015年4月18日から22日まで開催の米国がん学会の年会で発表したものだ。トリプルネガティブとは、がん治療の標的になる3つのタンパク質のいずれも持っていないがんを指す。3つのタンパク質とは、女性ホルモンに反応するエストロゲン受容体やプロゲステロン受容体のほか、細胞の増殖に関係するHER2というタンパク質だ。3つが陰性という意味でトリプルネガティブと言う。このタイプの乳がんはホルモンへの反応などの特徴が分かりにくく、薬が効きにくいと知られている。今回、このトリプルネガティブの乳がんに対する新たな治療として、「免疫チェックポイント阻害薬」と呼ばれるタイプの薬が試された。



「免疫チェックポイント阻害薬」とは?

免疫チェックポイント阻害薬はMedエッジで継続的に紹介してきた通り、「免疫療法」の一つ。免疫は、体にもともと備わり、感染症やがんをはじめ病気の原因を攻撃する仕組み。免疫チェックポイントは、免疫の暴走を防ぐ仕組みなのだが、がん細胞が悪用すると問題になる。「PD-L1」というタンパク質をがんが持ち、人間の免疫細胞の持っている「PD-1」というタンパク質にくっつき免疫をまひさせる。そうなるとがんを攻撃できなくなる。「CTLA4」というタンパク質で免疫にブレーキをかける仕組みもある。研究グループは、免疫を担うT細胞で発現するPD-1とがん細胞のPD-L1との間の相互作用を邪魔する「MPDL3280A」という薬の安全性と有効性を調べている。MPDL3280Aが相互作用を邪魔して、T細胞が再びがん細胞にフル攻撃を仕掛けられるようになると想定した。研究グループは、54人のトリプルネガティブの転移のある乳がんの人を対象として、MPDL3280Aの最も初期段階の人での試験である「第1相試験」を実施した。

19%でがんに反応

まずは安全性を確認するのが重要な試験で、薬と関連した有害事象として最も一般的だったのは、倦怠(けんたい)感、発熱、吐き気、食欲不振であった。投与を受けた人のうち薬に関連のある有害事象を1つ以上経験した人は69%だった。有害事象は軽いグレード1から重いグレード5まで分かれており、1つ以上の重めのグレード3の有害事象を経験したのは11%。グレード4の有害事象を経験したのは1人だった。効果としても、病気の進行が24週間以上止まった人の割合は27%となり、がんが小さくなる反応を示した人も19%確認できた。研究グループはまずはMPDL3280Aの安全性は許容でき、投与に耐えられると確認。さらに、有効性の確認を進める方針。

文献情報

The investigational immunotherapy MPDL3280A was safe, tolerable, and showed early signs of durable clinical activity in patients with metastatic triple-negative breast cancer, according to data from a first-in-human phase I clinical trial presented here at the AACR Annual Meeting 2015, April 18-22.

http://www.aacr.org/newsroom/pages/News-Release-Detail.aspx?ItemID=707#.VUBvLaa3CQk