がん細胞だけを狙った、中性子線による新しい粒子線治療

「リン酸カルシウム・ガドリニウム・中性子線」と呼ぶ、がん細胞だけを攻撃する新しいがん治療が開発されつつあるようだ。日本の東京大学・ナノ医療イノベーションセンターを含む研究グループが、ACSナノ誌2015年6月11日号オンライン版で報告した。

MRI検査で使うガドリウムを応用

研究グループはMRIの造影剤などに利用されている「ガドリニウム」に注目した。ガドリニウムは、中性子線を照射するとこれを捕まえる。この性質を利用すると、がん細胞だけに中性子線を照射し、選択的に治療することが可能になり、がん治療に高い効果を上げる可能性がある。

ナノカプセルに収める

次にこのグループは、「リン酸カルシウム」と「ガドリニウム-ジエチレントリアミン五酢酸(Gd-DTPA)」と呼ばれる2つの分子を組み合わせ(Gd-DTPA/CaP)、この物質ががん細胞だけに集まるように工夫。ナノカプセルの中に収められた形にした。その上でMRIを見ながら、この物質をターゲットとして中性子線を照射した。

MRIで確認できる

結果として、Gd-DTPA/CaPは、一定の濃度で中性子線を照射したところ、50%のがん細胞が死滅すると分かった。中性子を当てない状態ではがん細胞にも無害だった。治療の特徴はがん細胞だけを狙って治療できることにある。Gd-DTPA/CaPはGd-DTPAを腫瘍のある場所に蓄積させることが可能で、MRIで腫瘍のある位置を正確に特定できる。ここに中性子線を照射することで、他の細胞を傷つけず、がん細胞だけを狙って中性子線を照射することが可能となる。




実用化の効果に注目

研究グループはネズミで実験。マウスの体重減少は見られず、安全性の高いがん治療として、Gd-DTPA/CaPが有望と証明している。今後、さらにがん治療への本格的な適用が有効となるか注目されそうだ。

文献情報

Mi P et al. Hybrid Calcium Phosphate-Polymeric Micelles Incorporating Gadolinium Chelates for Imaging-Guided Gadolinium Neutron Capture Tumor Therapy. ACS Nano. 2015 Jun 11. [Epub ahead of print]

Hybrid Calcium Phosphate-Polymeric Micelles Incorporating Gadolinium Chelates for Imaging-Guided Gadolinium Neutron Capture Tumor Therapy. – PubMed – NCBI

ACS Nano. 2015 Jun 23;9(6):5913-21. doi: 10.1021/acsnano.5b00532. Epub 2015 Jun 11. Research Support, Non-U.S. Gov’t