サルモネラ菌を改造してがんを殺す

サルモネラ菌の毒を弱めて、がんを殺すために役立てられるようだ。

サルモネラ菌に遺伝子工学的な改変を行う

ドイツと米国の研究グループが、米国微生物学会のオープンアクセス・オンラインジャーナルであるエム・バイオ誌2015年4月号で報告している。

サルモネラ菌の力はもろ刃の剣と言える。サルモネラ・エンテリカ(サルモネラ菌の一種)などのサルモネラ菌にがん細胞を死滅させる働きを果たし得るとこれまでも報告があった。

サルモネラ・エンテリカは固体の腫瘍に入り込む上に、がんそのものを消し去る効果を発揮する。問題はサルモネラ菌そのものが体にとって有害であるところだ。重篤な食中毒の原因になり、敗血症を起こす。

がんを殺すほどの効果と人間を殺すほどの有害性をうまくコントロールして、がんを殺す目的に特化する形で使えないか。

研究グループは、サルモネラ菌の改造を模索した。有害性につながる、外側の膜にある「リポ多糖」の構造を改変、毒性を弱めるように変化させた。リポ多糖構造は敗血症を誘導する原因になるもの。

研究グループは遺伝子工学技術で、リポ多糖構造の合成に関わる遺伝子を削除したサルモネラ菌株を作り出した。




さらなる改変を行う

しかもがん細胞を殺すのに最も効果的な株を特定。腫瘍に入り込みやすいように、「アラビノース誘導プロモーター」という遺伝的改変も追加した。研究グループは、変化を起こしたサルモネラ菌のがんへの効果をがんを持ったネズミで検証。結果として、正常な細胞に害を与えることなく、腫瘍に入りこんで効果を発揮した。

セルロース邪魔して弱い菌に

サルモネラ菌の有害性が問題となった一方で、サルモネラ菌そのものが自らの有毒性を下げる仕組みもあるようだ。米国エール大学を中心とした研究グループが、米国科学アカデミー紀要2015年2月号で報告しているものだ。有毒性を左右するのは、食物繊維の主成分でもある「セルロース(地球上で最も多い炭水化物)」。

研究グループが検証したところ、作られるセルロースを邪魔すると、サルモネラ菌の毒性が強まると証明した。

セルロースがサルモネラ菌の毒性を調節しているという結論。セルロースを増やしていくと、毒性が弱まって、人間からの抵抗を避けられるようになる。サルモネラの毒性をコントロールできれば、新しい有効活用の道も開けるのかもしれない。

文献情報

Frahm M et al. Efficiency of Conditionally Attenuated Salmonella enterica Serovar Typhimurium in Bacterium-Mediated Tumor Therapy. MBio. 2015;6: e00254-15.

Efficiency of conditionally attenuated Salmonella enterica serovar Typhimurium in bacterium-mediated tumor therapy. – PubMed – NCBI

MBio. 2015 Apr 14;6(2). pii: e00254-15. doi: 10.1128/mBio.00254-15. Research Support, N.I.H., Extramural; Research Support, Non-U.S. Gov’t

Genetically Engineered Salmonella Promising as Anti-cancer Therapy

WASHINGTON, DC – April 14, 2015 – A new study has demonstrated that genetically modified Salmonella can be used to kill cancer cells. The study is published in this week’s issue of mBio, an American Society for Microbiology online-only, open access journal.

Park SY et al. Flagella-independent surface motility in Salmonella enterica serovar Typhimurium. Proc Natl Acad Sci U S A. 2015;112:1850-5.

Flagella-independent surface motility in Salmonella enterica serovar Typhimurium. – PubMed – NCBI

Proc Natl Acad Sci U S A. 2015 Feb 10;112(6):1850-5. doi: 10.1073/pnas.1422938112. Epub 2015 Jan 26. Research Support, N.I.H., Extramural; Research Support, Non-U.S. Gov’t

YaleNews | Research in the news: Surprise regulator of Salmonella virulence discovered

Most bacteria are harmless. Even those, like Salmonella, that are dangerous place limits on their own virulence to ensure the host survives long enough to spread the infection.