膵臓癌の治療に遺伝子利用

がんになった人の遺伝情報を全て調べて、その情報に基づいて最適な治療法を選ぶ「オーダーメード医療」。現実には、実行する上で難しい点も多いようだ。

オーストラリアのシドニー大学を中心とする研究グループが遺伝子の利用の運用について検証。課題を提示している。





オーダーメード医療の実施可能性を検討

研究グループは、2015年4月18日から22日まで開催の米国がん学会の年会で報告。同時に、同学会誌、クリニカル・キャンサー・リサーチ誌オンライン版で2015年4月20日に報告している。

遺伝情報を読み取る「DNAシーケンス」の技術進歩によって、個人のゲノム情報を調べることは簡単になってきた。各人の遺伝子の条件次第で、有効な治療は変わってくるので、最良な選択肢を選ぶために生かせる。

今回結果が発表された臨床試験もそのような研究の一つ。

膵臓がんになった人の遺伝情報から、特定の薬が効きやすいと判断する根拠につながる3点の検査の運用を検証している。一つは、「HER2」と呼ばれる遺伝子の増幅の程度、もう一つは「KRAS」と呼ばれる遺伝子の野性型か変異型か、さらにDNAの修復に関わる遺伝子の突然変異の有無。

DNAの突然変異に関わる遺伝子は4つで「BRCA1」「BRCA2」「PALB2」「ATM」。

実際の治療に至る前に障害

これまでに膵臓がんの93人からがん組織を取って、76人分について遺伝子の検査を実施した。遺伝子検査を通過したのは22人にとどまっていた。

結果として、KRAS野性型14人、HER2増幅5人、BRCA2変異2人、ATM変異1人という結果が出てきた。この結果が出てきた人については特定の薬が効きやすいと判断できる。

遺伝子検査の同意を得てから検査の結果が出てくるまでの期間は21.5日を中心に分布していた。

解析できなかった理由としては、そもそも検査のための試料を得られなかったり、十分ながん細胞が含まれていなかったりしたこと。

一般状態の悪化のために研究が続けられなかった場合も多かった。遺伝子検査によって膵臓がんの治療に生かそうとしても、そもそも調べるための組織を取るのも難しいというわけだ。

実用化に向けて解決が必要な初歩的問題となる。

文献情報

Chantrill LA et al.Precision Medicine for Advanced Pancreas Cancer: The Individualized Molecular Pancreatic Cancer Therapy (IMPaCT) Trial.Clin Cancer Res. 2015 Apr 20 [Epub ahead of print]

Clin Cancer Res. 2015 May 1;21(9):2029-37. doi: 10.1158/1078-0432.CCR-15-0426. Research Support, Non-U.S. Gov’t