悪性度の低い前立腺がんはまずは様子見?

悪性度の低い前立腺がんでは、手術をはじめとした治療をせずに、様子を見る方法が一般的になりつつあるのかもしれない。米国ジョンズ・ホプキンス大学医学部の研究グループが、米国臨床腫瘍学会(ASCO)が発行する有力がん専門誌であるジャーナル・オブ・クリニカル・オンコロジー誌のオンライン版で2015年8月31日に報告した。

毎年、状況をウォッチする

かねて前立腺がんでは、「アクティブ・サーベイランス」という考え方が広がりつつある。直訳すれば、積極的な監視といった意味で、リスクが低いと分かっている人は、特別な治療は差し控えるというものだ。研究グループは、前立腺の組織を取った検査から前立腺と判明した人から、低リスクの人がどのような生存期間となるかを検証した。対象となったのは、腫瘍の悪性度(転移のリスク)が米国総合がんセンターネットワーク(NCCN)のガイドラインに沿って「低リスク」「超低リスク」に分類された約1300人。年齢の中央値は66歳。研究が始まった1995年以降、参加者がそれぞれ75歳になるまで泌尿器科医が毎年、組織を検査した。組織検査で悪性度が高くなった人には、治療が行われた。

前立腺がんで亡くなる人は1%に満たず

全体では5年程度を中心とした追跡期間となっており、中には10〜15年の追跡した人もいた。15年追跡調査できた人では、前立腺がんで亡くなったのは0.1%。前立腺がんの転移のあった人も0.6%%だった。亡くなる人は、ほとんどは前立腺がんとは別の原因でなくなっていた。15年の間に前立腺がん以外の亡くなる確率が24倍となっていた。

悪性度上昇の確認は4割弱

実際に悪性度の上昇はどのように確認できたかも詳しく分かっている。2年以内を中心に、前立腺がんの悪性度が上がったのは、約470人(36%)。6%程度の人では、すぐに治療が必要と判断されるほどの進行度となっていた。全体で見ると、治療を受けないで済む期間は、8年程度となっていた。

治療関係の合併症に目を

研究グループによると、米国ではアクティブ・サーベイランスを選ぶ割合は30%〜40%。北欧諸では80%となっているという。治療の副作用や費用を抑えるメリットと早期の治療のメリットとのバランスをどう取るかが重要になる。放射線や手術による治療を受けた前立腺がんの人の20%が、治療関連の合併症で5年以内に再入院しているという報告もあるという。研究グループは、「手術や放射線治療が不要な人ではなるべく避けることが目標」と指摘。今後は、画像技術や血液検査で分かるがん進行の目印となる「バイオマーカー」の進歩に伴って、がんの悪性度を先に知る精度も改善していると期待感を示している。アクティブ・サーベイランスは日本でも関心を持たれる対応となっている。今回の検証は白人中心で、前立腺がんの悪性度が高い傾向のある黒人では当てはまるか分からないところもあるという。国際的にどのように受け止められるかも課題だろう。

文献情報

Men with relatively unaggressive prostate tumors and whose disease is carefully monitored by urologists are unlikely to develop metastatic prostate cancer or die of their cancers, according to results of a study by researchers at the Brady Urological Institute at Johns Hopkins, who analyzed survival statistics up to 15 years. 

J Clin Oncol. 2015 Oct 20;33(30):3379-85. doi: 10.1200/JCO.2015.62.5764. Epub 2015 Aug 31.