潰瘍性大腸炎・クローン病は癌に発展させる?

原因不明の下痢や腹痛が続く難病の「炎症性腸疾患」。ストレスを強く感じるほど、炎症性腸疾患の症状も強く感じやすくなる。がんにもつながり得る炎症も悪化させる?

炎症を伴う腸の病気

カナダのマニトバ大学の研究グループが胃腸科分野の専門誌アメリカン・ジャーナル・オブ・ガストロエンテロロジー誌2015年7月号で報告した。

「クローン病(CD)」「潰瘍性大腸炎(UC)」などの「炎症性腸疾患(IBD)」は、長く下痢が続く原因不明の難病。

放っておくと大腸がんへ移行する場合がある。これまでの研究から、炎症成長疾患の人にとって、ストレスは、腸炎の自覚症状を悪化させる原因になるというデータが得られている。

今回研究グループは、ストレスを感じると実際の炎症の状態も悪化するのかどうか、検証を行った。炎症はがんの発生とも関係すると知られる(大腸がんと炎症との接点?主に膵臓で作られる物質「SPINK1」ががんで、熊本大学が報告を参照)。関係の有無は見過ごせない。

炎症も促す?

対象者は炎症性腸疾患の478人。症状やストレスの調査と検便による炎症の検査を受けてもらった。

症状の度合いについては、病気の内容ごとに3つの指標に基づいて行われた。潰瘍性大腸炎の症状は「マニトバIBD指標(MIBDI)」、クローン病の症状は「ハーベイ・ブラッドショウ指標(HBI)」、潰瘍性大腸炎の症状は「パウエル・タック指標(PTI)」で評価した。

ストレスの度合いについては、「コーエンの自覚ストレス尺度(CPSS)」によって測定した。腸炎の度合いは、便の中に増えると炎症が強いと判定できるタンパク質の一種である「便中カルプロテクチン(FCAL)」の測定値で判断した。

便1g当たりFCALが250μg(マイクログラム、マイクロは100万分の1)以上となると、炎症が顕著であると判断される。得られたデータを基にして統計学的に解析を行い、腸炎、ストレスの度合い、症状の強さの間で関連性を評価した。

直接はつながらず

感じたストレスの度合いが増えると、クローン病、潰瘍性大腸炎ともに症状は強くなっていた。ストレスの尺度であるCPSSが1ポイント増加すると、炎症性腸疾患の症状の強さは7%ほど悪化していた。

一方で、ストレスはクローン病、潰瘍性大腸炎ともに、炎症の度合いには影響していなかった。また、炎症性腸疾患の症状が強い場合(MIBDIが3以下)は強くない場合に比べて、潰瘍性大腸炎の炎症についてはリスクが3.94倍ほど高かった。

クローン病の炎症は、症状の強さには関係していなかった。

いずれにせよ注意を

今回の検証により、ストレスを強く感じるほど、炎症性腸疾患の症状も強く感じやすくなるが、実際の炎症が強まっているわけではないようだと分かった。

炎症によって、症状が起こってくる一方で、ストレスがまた異なる仕組みで働く。さらに長期にわたる調査も必要と研究グループは付け加える。いずれにせよストレスは症状のもと。注意は必要と言えそうだ。

文献情報

Targownik LE et al. The Relationship Among Perceived Stress, Symptoms, and Inflammation in Persons With Inflammatory Bowel Disease. Am J Gastroenterol. 2015; 110: 1001-12.

Am J Gastroenterol. 2015 Jul;110(7):1001-12; quiz 1013. doi: 10.1038/ajg.2015.147. Epub 2015 Jun 16. Research Support, Non-U.S. Gov’t