悪性度の低いとされる分化型の甲状腺がんでも、85歳以上となっているときには手術を勧めると良いと報告されている。死亡率を減らせるようだ。
手術によって生存が長くなる
米コネチカット大学のマーヴィン・カストリー氏らの研究グループが、加齢に伴う医療の専門誌ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ジェリアトリクス・ソサエティ誌2015年5月号で報告している。研究グループは、85歳以上を対象として、悪性度の低い分化型の甲状腺がんの特徴と治療パターンを検証した。対象としたのは、1988年から2007年にかけて診断を受けた、別の場所のがんが転移してきたのではない甲状腺がんにかかっている85歳以上の424人。複数の条件を調べて特徴を見ている。条件として挙げているのは、年齢、性別、組織学、病気の程度、腫瘍サイズ、治療、手術の種類、死因、生存の長さ。
放射性ヨウ素治療は生存に影響なし
腫瘍サイズと病気の程度は、死因に大きく影響していた。複数の条件のうち、死亡率に大きく関わったのは、「手術を受けていない」という条件に当てはまる場合だった。手術を受けているかどうかは年齢と大きく関連していた。手術を受けていた人は、受けていない人よりも生存が長かった。手術の種類と手術後の放射性ヨウ素治療は、生存の長さに明らかな影響を及ぼしていなかった。分化形の甲状腺がんは比較的進行が遅い病気だとされているが、85歳以上には当てはまらないと研究グループは見ている。日本でも高齢となっていても体力を考えつつも手術を考えてもよいのかもしれない。
文献情報
Marvin K et al. Differentiated Thyroid Cancer in People Aged 85 and Older. J Am Geriatr Soc. 2015 May 6. [Epub ahead of print]
Differentiated thyroid cancer in people aged 85 and older. – PubMed – NCBI
J Am Geriatr Soc. 2015 May;63(5):932-7. doi: 10.1111/jgs.13397. Epub 2015 May 6. Research Support, Non-U.S. Gov’t