癌を撃退「GLV-1h68」腫瘍溶解ウイルス

がんの治療は手術や薬、放射線、レーザーとさまざまあるが、最近、その可能性が注目されているのがウイルスを使ってがんをいわば「溶かす」治療だ。海外では、悪性黒色腫をはじめとした治療で実用化に向けた動きが進んでいる。日本国内でも脳腫瘍に対する治療が検討されているところだ。

今回、手足の肉腫と呼ばれるがんに対する治療に、従来からある薬とウイルスを組み合わせると、薬だけを使った場合よりも効果的である可能性を示す結果が出てきた。まだ動物を使った実験的な段階ではあるが、今後、人間の治療が難しいがんへの応用の可能性もある。英国がん研究所の標的療法チームの研究グループは、2014年6月にインターナショナル・ジャーナル・オブ・キャンサー誌で報告している。

 

手足の血流を止めて集中攻撃

研究グループは、がんの治療効果を高めるため、腫瘍溶解ウイルス「GLV-1h68」という特殊なウイルスを、従来の薬に加える方法を検証した。手足の肉腫のあるラットに対して複数の治療の戦略が考えられる。今回研究グループが検証したのは、メルファランと呼ばれる抗がん薬を単独で使った場合、メルファランに加えて、腫瘍壊死因子α(TNF-α)を組み合わせて治療する場合、さらに、GLV-1h68を足した場合の治療効果だ。その上に、研究グループは治療効果を高めるために、手足の血流を止めて、肉腫に集中攻撃をする方法も取った。この結果、ウイルスを加えた方が肉腫の進行を遅らせる上に、生存期間を延ばせると確認できた。血流を止めた方が、ウイルスを病変部分に集中させられる可能性がある点も確かめた。ウイルスを使ったがん治療は注目される分野だが、肉腫でも応用が広がってくる可能性がありそうだ。

文献情報

Pencavel TD et al.Isolated limb perfusion with melphalan, tumour necrosis factor-alpha and oncolytic vaccinia virus improves tumour targeting and prolongs survival in a rat model of advanced extremity sarcoma. Int J Cancer. 2014 Jun 30. [Epub ahead of print]

Int J Cancer. 2015 Feb 15;136(4):965-76. doi: 10.1002/ijc.29059. Epub 2014 Jul 22. Research Support, Non-U.S. Gov’t