低レベル放射線でがんになりやすい人がいる?

弱い放射線でも確率的にがん化に関係する場合がある。弱い放射線でも影響を受けてがんになりやすい人を遺伝子から特定できるかもしれない。そんな検査につながり得るような研究結果が報告された。

米国のローレンス・バークレー国立研究所を含む研究グループが、科学国際誌であるサイエンス・レポート誌2015年3月9日号で報告した。

遺伝子とがんの周りの環境、どちらが影響受けるか

研究グループは、ネズミの動物実験で、遺伝子とがんの周りの環境ががん細胞の増殖に与える影響を研究した。

まず、遺伝的に多様性を持つネズミを対象として、次にがんに耐性の高い遺伝子株と、がんに感受性の高い遺伝子株を組み合わせながら、350の遺伝的に分かれているネズミをバイオ技術で作り出した。

がんになりにくい耐性のあるネズミ、がんになりやすい感受性のあるネズミ、その中間のネズミがいるわけだ。研究グループは、それぞれのネズミに1回だけ、全身に低レベルの放射線を浴びせた。

このときに、4番目の乳房だけは、あらかじめがんになりやすい上皮細胞を取った。その上で、放射線を当てた後に、放射線を浴びていないがんになりやすい上皮細胞を改めて戻すという手術をした。

放射線を浴びる影響を、がんになりやすい遺伝子に対してなのか、がんの周りの環境に対してなのかを、このひと手間をかけることで調べられるようにしている。

がん発症に関わる3つの遺伝子座を特定

その結果、少数だが、低レベルの放射線でがんになりやすいネズミを特定できた。研究グループは、3つの遺伝子座の変化で、がんの周りの環境が影響を受けやすくなると突き止めた。

遺伝子はDNAの並びによって特徴が変化している。DNAは塩基という分子の文字列から成っており、その1カ所が変化すると人間の特徴も変化し得る。今回は動物実験で3カ所が変わると放射線の影響の受けやすさが変わったわけだ。

人でも同様の遺伝子座を特定すれば、遺伝子とがんの周囲の環境の相互作用に関して調べられる可能性があると見ている。

遺伝子の状態は血液検査や唾液の検査で知ることが可能だ。弱い放射線を検査で浴びる機会もあるので、事前にリスクを知るために役立つかもしれない。

文献情報

Zhang P et al. Identification of genetic loci that control mammary tumor susceptibility through the host microenvironment. Sci Rep. 2015 ;5:8919.

Berkeley Lab scientists studied mice and found their risk of mammary cancer from low-dose radiation depends on their genetic makeup.

Sci Rep. 2015 Mar 9;5:8919. doi: 10.1038/srep08919. Research Support, U.S. Gov’t, Non-P.H.S.