大腸癌の治療を妨げる「がん幹細胞」の目印

治療を妨げる、たちの悪い「がん幹細胞」。このたび、大腸がん幹細胞の目印となり、がん幹細胞としての悪い性質に直接関わっているタンパク質が発見された。大腸がん治療の新しい標的にできるかもしれない。中国の浙江(せっこう)大学の研究グループが、がんの専門誌オンコジーン誌で2015年3月19日に報告した。

大腸がん幹細胞の目印を探索

がん幹細胞(がん始原細胞)は、次々にがん細胞を生み出し、いろいろな種類のがんに変化する能力も持っている。おまけに抗がん剤も効きにくく、たちの悪い特殊な細胞だ。結腸直腸がんでもがん幹細胞は問題となっている。「セルフリニューアル」という能力で、悪性度の高い状態(未分化)を保ちつつ増殖するので、がんの進行、転移、再発、抗がん剤耐性に直接関わってくる。ところで、細胞の表面にはさまざまなタンパク質が存在する。細胞表面のタンパク質には「CD番号」と呼ばれる通し番号がつけられており、細胞の種類によって、どれが表面に存在するか、いろいろ調べられている。結腸直腸がん幹細胞でも、表面タンパク質の研究が行われて、いくつか報告もされている。しかし、結腸直腸がん幹細胞の目印にできるような、またはセルフリニューアルに関わる表面タンパク質が存在するかどうかはまだ不明である。そこで今回研究グループは、結腸直腸がん幹細胞の目印になるような表面タンパク質の探索を行った。

「CD58」「CD44」

研究グループは、まず、がん幹細胞を含むさまざまな結腸直腸がん細胞をシャーレで培養して増やした。増やしたのは、実験用のいろいろな種類の大腸がんの細胞と、実際に切除した大腸がんの組織から取って来た細胞。次に「遺伝子チップ」という方法で、増やしたがん幹細胞の表面に出ているタンパク質を網羅的に解析した。その結果、結腸直腸がん幹細胞の表面には「CD58」「CD44」の2つのタンパク質がたくさん出ていると分かった。これは、つぶした細胞の遺伝子を解析した結果だ。そこで、がん幹細胞の表面にこの2つのタンパク質が実際に出ていることを、細胞の形を保ったまま調べられる「フローサイトメトリー」という方法で再確認した。今度は、「CD58」「CD44」がたくさん出ている細胞の機能を解析した。すると、セルフリニューアルの能力、転移を起こしやすくなる「上皮間葉転換」を生じる能力を持ちながら、がんの塊を作り、確かにがん幹細胞であると確認できた。

「CD58」が悪さ

さらに詳しく解析したところ、2つのうちの「CD58」が、がん細胞に「増えろ」という指令をたくさん送るのと、セルフリニューアルの能力に直接関わっていると判明した。この指令は具体的に「Wnt/β-カテニンシグナル」という種類の指令で、CD58が「Dickkopf3」というタンパク質を壊すことで指令がたくさん送られるようになったと分かった。また、このがん幹細胞表面のCD58を、遺伝子操作で強制的に減らすと、増殖とがんの塊を作る速度が遅くなるのが確認できた。これらの結果から、CD58は結腸直腸がん幹細胞の表面にある目印で、しかもがん幹細胞としての悪い性質に直接関わっていると分かった。CD58は結腸直腸がん治療の新しい治療標的にできるかもしれないと研究グループは述べている。

文献情報

Xu S et al. CD58, a novel surface marker, promotes self-renewal of tumor-initiating cells in colorectal cancer. Oncogene. 2015; 34: 1520-31.

Oncogene. 2015 Mar 19;34(12):1520-31. doi: 10.1038/onc.2014.95. Epub 2014 Apr 14. Research Support, Non-U.S. Gov’t