癌を老いさせる新薬候補

「パクタマイシン」と呼ばれる薬は強力な抗がん剤として開発されたが、毒性が強すぎるために一度も実際に使用されることがなかった。それがこのたび「アナログ(類似体)」という形で再浮上するという。がんを老いさせるという点がポイントだ。

パクタマイシンのアナログ

米国のオレゴン州立大学の研究グループが、オンライン科学誌プロスワン(PLoS One)で、2015年5月4日に報告した。パクタマイシンは、強力な抗腫瘍薬として大きな期待を寄せられていたが、細胞に対する毒性が強いために一度も使われることがなかった。そのパクタマイシンを改造したアナログ(類似体)である「TM-025」と「TM-026」という2つの薬が、頭と首の部分にできる扁平上皮がん細胞の増殖を止める効果があると分かった。

がんを眠らせる

もともとの抗がん剤パクタマイシンは、タンパク質の合成を邪魔する効果を持つ薬だった。全ての細胞を殺してしまう。それに対して、アナログは元のパクタマイシンとは異なった働き方をする。がん細胞を殺すのではなく眠らせると研究グループは説明する。化学療法のこれまでの考え方は、がん細胞を完全に殺して「破壊」を目指すものだった。このたび開発されたアナログは、細胞の加齢を促す。老衰を早める点で異なる。老化したがん細胞は死なないが、がんの成長、腫瘍の拡大の速度が遅くなる。あるいは停止する。植物状態で生き続ける。

がん特有の副作用も起こりにくい

がんを抹殺するのではなくコントロールするというアプローチで化学療法の薬剤に対する抵抗性も起こりにくくなる可能性があるという。抗がん剤が原因となる細胞死による副作用も減らせる。今後は、がん細胞に正確に届くような方法の開発が必要という。ナノ粒子を使った方法など、いろいろな新技術が存在している(ナノ粒子が病気の治療で台頭、「がん」「動脈硬化」「角膜移植」など治療効果を強めるを参照)。有望な新薬候補として注目されるかもしれない。

文献情報

Guha G et al.Novel Pactamycin Analogs Induce p53 Dependent Cell-Cycle Arrest at S-Phase in Human Head and Neck Squamous Cell Carcinoma (HNSCC) Cells.PLoS One. 2015;10:e0125322.

PLoS One. 2015 May 4;10(5):e0125322. doi: 10.1371/journal.pone.0125322. eCollection 2015. Research Support, N.I.H., Extramural; Research Support, Non-U.S. Gov’t