血糖値をコントロールするホルモンが腸の癌化にも関与!?

小腸で分泌され、血糖値をコントロールするホルモンとして知られている「グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)」が、腸の成長やがん化にも関与していそうだとこのたび判明した。カナダのマウントサイナイ病院を中心とした研究グループが、有力科学誌のセル・メタボリズム誌で2015年3月3日に報告した。

大腸の近くに集中しているのには意味があるはず

食事を取ると小腸から分泌され、膵臓のβ細胞からのインスリンの分泌を促進するホルモンを「インクレチン」という。インクレチンには「GIP」「GLP-1」の2種類がある。

GLP-1の方は、食事を取って血糖値が高くなった場合にのみ、小腸の「L細胞」と呼ばれる細胞から分泌される。GLP-1は、膵臓のβ細胞の表面にある「GLP-1R」にくっつき、β細胞にインスリンを分泌させる。

しかし、大部分のL細胞は、小腸遠位部(大腸に近い側)に集中して存在している。今回研究グループはこの点に着目。GLP-1には血糖値を下げるホルモンを促す以外の役割もあると予想し、GLP-1とGLP-1Rの未知の役割をネズミの実験により検証した。

今回は、遺伝子操作で、生まれつきGLP-1Rを体で作れないようにしたネズミや、GLP-1そのものの代わりに「エキセンジン-4」という、GLP-1Rにくっついて作用する人工合成ホルモンを使ってさまざまな検証実験を行った。

各種ネズミで腸の細胞増殖に関与を証明

その結果、腸の細胞の表面にあるGLP-1Rにエキセンジン-4が作用すると、小腸と大腸の細胞分裂を促進すると分かった。APCという遺伝子を操作したネズミは、腸にポリープができる。

このネズミに「エキセンジン-4」を与えたところ、小腸にできるポリープの数や大きさが増えた。また、このネズミをさらに遺伝子操作し、生まれつきGLP-1Rが体で作れない状態にしたところ、小腸や大腸のポリープの数は減っていた。

このポリープの数の増減には、他の成長因子(上皮成長因子や腸管上皮インスリン様成長因子)によるシグナルは関与していないと、他の遺伝子を操作したネズミの実験により判明した。

さらに研究を進めたところ、エキセンジン-4がGLP-1Rにくっついて作用すると、角化細胞増殖因子「Fgf7」が増えて、大腸と小腸の増殖を促進していたと分かった。結局、腸の細胞の増殖には、GLP-1Rを介して起きる作用と、Fgf7との両方が重要だと分かった。

今回の研究で、GLP-1Rを介して起きる作用には、インスリンの分泌とは全く別の、腸の細胞の増殖やがんの発生の調節もあると分かった。ホルモンの未知の働き。まだ他にもいろいろありそうだ。

文献情報

Koehler JA et al.GLP-1R Agonists Promote Normal and Neoplastic Intestinal Growth through Mechanisms Requiring Fgf7.Cell Metab. 2015;21:379-91.

Cell Metab. 2015 Mar 3;21(3):379-91. doi: 10.1016/j.cmet.2015.02.005. Research Support, Non-U.S. Gov’t