「骨肉腫」、悪性度につながる仕組み

子どもに多い骨のがん「骨肉種」。その悪性度につながる仕組みの一部が解明された。新たな標的治療につながる可能性がありそうだ。米国ニューヨーク大学医学部の研究グループが、オンライン科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ誌2015年4月号で報告した。

「Sox2」と「がん幹細胞」

「骨肉種」は、代表的な「骨のがん」。発症する原因はまだ完全には解明されていない。子どもに多く、急激に悪化し、治療に骨の切断が必要になる場合が多いため、原因究明が急がれている。研究グループは以前、DNAにくっついてがん細胞の増殖スイッチをオンにする役割のタンパク質「Sox2」が、骨肉種に「がん幹細胞」が存在し続けるために重要であると報告した。がん幹細胞は、次々にがん細胞を生み出し、いろいろな種類のがんに変化する能力も持つ、たちの悪い特殊な細胞。「セルフリニューアル」という能力で、悪性度が高い状態を保ちながら増殖を続け、がんの進行、転移、再発、抗がん剤耐性を起こす原因に直接関わっている。今回研究グループは、ネズミと人間の骨肉腫の細胞を使って、Sox2がどういう仕組みで骨肉種にがん幹細胞を存在させ続けているのかを解析した。

2つ邪魔して1つ開放

その結果、Sox2は「ヒッポパスウェイ」と呼ばれる、シグナルの受け渡しの一連の流れに働きかけ、それが骨肉腫の悪性度につながっていると分かった。ヒッポパスウェイは、動物の器官の大きさを制御するシグナル経路。細胞の増殖にも関与すると知られており、がんの増殖を促す「YAP」というタンパク質を抑え込んでがんを防いでいると分かっている。Sox2は、ヒッポパスウェイで働いている「Nf2」「WWC1」という2つのタンパク質を直接邪魔していた。その結果、YAPがたくさん作られ、がん幹細胞の維持につながっていると判明した。実際、骨肉腫のがん幹細胞では「Nf2」「WWC1」の量が少なく、「YAP」の量が多かった。また、遺伝子操作により骨肉腫細胞でYAPが作れないようにした場合、存在するがん幹細胞の数は劇的に減った。今回骨肉腫で判明した、Sox2がヒッポパスウェイを邪魔してがん幹細胞を維持する仕組みは、Sox2が関与している他の種類のがんでも確認された。例えば、悪性脳腫瘍「グリオブラストーマ」でも同様だった。新たな治療の標的になり得る「Sox2」の発見は、骨肉腫の克服に向けて踏み出した重要な一歩と言えるだろう。

文献情報

Basu-Roy U et al. Sox2 antagonizes the Hippo pathway to maintain stemness in cancer cells. Nat Commun. 2015; 6: 6411.

Nat Commun. 2015 Apr 2;6:6411. doi: 10.1038/ncomms7411. Research Support, N.I.H., Extramural; Research Support, Non-U.S. Gov’t