免疫チェックポイント阻害薬が効く人に一つの特徴

標準の治療が効かない大腸がんおよび他のがんを持つ人にPD-1阻害剤として知られる免疫療法剤、ペンブロリズマブ、が効くかどうかをミスマッチ修復遺伝子の異常が正確に予測する。

がんの攻撃力を高める薬

米国ジョンズ・ホプキンス大学の研究グループが5月29日から6月2日にシカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(2015ASCO)で発表すると共に、ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン誌に2015年5月30日に報告した。ペンブロリズマブは、「免疫チェックポイント阻害薬」と呼ばれる治療の一つで、幅広い種類のがんに対する効果が証明されつつあり、注目されている。Medエッジで紹介してきた通り「免疫療法」の一つ。免疫は体にもともと備わり、感染症やがんをはじめ病気の原因を攻撃する仕組み。免疫チェックポイントは、免疫の暴走を防ぐ仕組みになるが、がん細胞と関係すると問題となる。一つは、「PD-L1」「PD-1」というタンパク質が関係した仕組みがある。PD-L1というタンパク質をがんが持ち、人間の免疫細胞の持っているPD-1というタンパク質にくっつき免疫をまひさせる。そうなるとがんを攻撃できなくなる。さらに、「CTLA4」というタンパク質で免疫にブレーキをかける仕組みもある。ペンブロリズマブは、このうちPD-1を邪魔する薬となる。薬の効きやすい人をあらかじめ特定できる意味は大きい。薬の治療は1年当たり10万ドル、日本円で1200万円もかかるというだけに無駄な治療を避けるのは大切となる

DNAの修復でエラーが発生

研究グループが注目したのは「ミスマッチ修復」という仕組みだ遺伝情報を保つDNAは「アデニン(A)」「チミン(T)」「グアニン(G)」「シトシン(C)」という4種類の塩基の並びになる。細胞が増えていくときに、AとT、CとGの対を作るように複製されていく。間違って鋳型の核酸と本来対を作らない核酸で対ができることもあり、「ミスマッチ」と呼ばれる。普通、ミスマッチは正しい核酸に替える酵素で修復されている。こうした修復はミスマッチ修復という。修復を担うミスマッチ修復を担う遺伝子に異常が起きると、突然変異が起こりやすくなる場合がある(「本当に最も恐ろしいがん」細胞分裂のときのエラーが一番怖いを参照)。研究グループによると、ミスマッチ修復遺伝子の欠陥は多くの種類のがんで頻度は少ないながら見つかっている。このミスマッチ修復遺伝子の欠陥があると、免疫チェックポイント阻害薬の効果がどう変化するかを検証している。

欠陥がない人は薬が効かない

研究グループは48人のがんを持つ人を3つのグループに分けた。第1のグループでは13人が進行した大腸がんで、ミスマッチ修復遺伝子に欠陥があった。8人はペンブロリズマブが部分的に効いた。がんの直径が30%収縮したことを意味する。4人は病気の安定した期間を延長させる効果があった。1人は病気が進行した。第2のグループでは、25人が進行した大腸がんで、ミスマッチ修復遺伝子に欠陥はなかった。25人全員が効かなかった。第3のグループでは、10人がさまざまながんで、ミスマッチ修復遺伝子に欠陥があった。4人は膵臓/胆管がん、2人は子宮がん、2人は小さい大腸がん、1人は胃がん、1人は前立腺がんを持った。1人の子宮がんを持った人は完全に回復して、がんが消失した。5人は部分的に効いた。1人は病気の安定する期間を延長させる効果があった。3人の病気は進行した。ミスマッチ修復の欠陥は既に検査できるもので、免疫療法の効果に対する目印として活用範囲は広がりそうだ。

文献情報

Small Study Shows Genetic Biomarker May Predict Cancer Patients’ Response to Immunotherapy Drug

Researchers caution that larger studies are needed to assess the potential for clinical use. May 29, 2015

In a report of a proof-of-principle study of patients with colon and other cancers for whom standard therapies failed, researchers at the Johns Hopkins Kimmel Cancer Center say that mistakes in so-called mismatch repair genes, first identified by Johns Hopkins and other scientists two decades ago, may accurately predict who will respond to certain immunotherapy drugs known as PD-1 inhibitors. Such drugs aim to disarm systems developed by cancer cells to evade detection and destruction by immune system cells. 

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1500596