「卵巣癌」2種の薬による新しい治療アプローチ

抗がん剤に、血管新生を防ぐ薬を併用する新しい治療アプローチにより、進行ステージの卵巣がんの縮小と生存の延長に成功した。まだネズミの実験で証明された段階だが、今後新しい治療法の開発につながりそうだ。カナダのゲルフ大学を中心とした研究グループが、生物学の国際誌FASEB誌2015年2月号で報告したものだ。

抗がん剤+血管新生をストップさせる薬「3TSR」

卵巣がんの中で最も多い「上皮性卵巣がん(EOC)」は、卵巣の表面組織のがんだ。上皮性卵巣がんは、診断された時には既に進行している場合が多い。したがってこのがんは、治療効果が限られ、長期生存率も低くなっている。このたび研究グループは、進行した上皮性卵巣がんにおいて、「血管新生」をブロックする薬と抗がん剤による化学療法を併用した治療が、治療効果に結びつくかどうかを検討した。「血管新生」とは、がんが自ら大きくなりやすいように、がんに血液を供給するための新しい血管を開通させる現象だ。

「3TSR」でがん細胞は9倍多く死んだ

今回研究グループが注目したのは「3TSR」(トロンボスポンジン-1タイプ1リピート)という、細胞の周りに存在するタンパク質だ。3TSRはがん細胞に突き刺さっている「CD36」というタンパク質の細胞の表側部分にくっつく。すると細胞の内側部分には、「SHP-1」というタンパク質が付いてくる。次いで、「VEGF受容体」というタンパク質に変化が起こる。結果として、血管新生を止める仕組みになっている。今回の実験ではまず、シャーレの中で増やした上皮性卵巣がんの細胞に、3TSRを投与してみた。すると、何も投与していない細胞に比べ、9倍も多くのがん細胞が、「アポトーシス」というタイプの細胞死メカニズムで死んだ。

ネズミでがんが6分の1、生存率もアップ

次に進行した上皮性卵巣がんを再現したネズミで、3TSRの実際の生体への効果を検討した。ネズミに3TSRを投与して治療したところ、がんが縮小し、血管新生も止まった。さらに、抗がん剤の吸収も良くなった。次に、3TSRに加え、抗がん剤も定期的に投与し、併用療法を行ってみた。すると、薬を投与しなかったネズミと比べて、がんのサイズが最大6分の1以下に縮小した。また、末期で治療を開始した場合の生存率も高かった。末期の卵巣がんを救う、新しい治療方法が誕生するかもしれない。

文献情報

Russell S et al.Combined therapy with thrombospondin-1 type I repeats (3TSR) and chemotherapy induces regression and significantly improves survival in a preclinical model of advanced stage epithelial ovarian cancer. FASEB J. 2015; 29: 576-88.

FASEB J. 2015 Feb;29(2):576-88. doi: 10.1096/fj.14-261636. Epub 2014 Nov 13. Research Support, N.I.H., Extramural; Research Support, Non-U.S. Gov’t