膵臓がんタイプでより効果的な治療を

膵臓がんで最も多い「膵管腺がん」の大規模な遺伝子解析が行われ、染色体異常のパターンにより4つのタイプに分類された。さらに、タイプ別に効果がある抗がん剤の種類もプロファイリングできる可能性が示された。この4つのタイプは、今後膵臓がんの治療の改善に役立つかもしれない。オーストラリアと英国を中心とした共同研究グループが、有力科学誌ネイチャー誌で2015年2月26日に報告した。

100人分のがんの全ゲノムDNA配列を決定

膵臓がんは、最も治療が難しいがんの一つであり、生存率はおよそ5%。新しい治療法の開発は急務だ。効果的な治療を行うための近道は、膵臓がんのタイプを分類して、タイプ別に効く薬と効かない薬を特定することだ。今回研究グループは、このような「プロファイリング」に挑んだ。研究グループは、膵臓がんの中で最も多い「膵管腺がん(PDACs)」の組織を100人分集め、それらの全ゲノムDNA配列を調べた。さらに、遺伝子の個人差である「コピー数多型(CNV)」を解析した。通常、人間の細胞は、同じ遺伝子を2個(2コピー)持つ。父方と母方それぞれから1つずつ受け継いだものだ。ところが人によっては、ある遺伝子は1コピーしかなかったり、または3コピー持っていたりと、コピー数に個人差が見られる場合がある。これがコピー数多型だ。コピー数多型は、病気のなりやすさや、薬の効きやすさなどにも関与すると言われている。

「染色体再編」を確認

今回の遺伝子解析の結果、膵臓がんの細胞では、長いDNAが束ねられた状態の「染色体」が一部欠けたり、ちぎれて別の染色体にくっついたり、一部が重複していたりといった、大きな構造変化「染色体再編」が頻繁に起きていると分かった。がん細胞の増殖では、「正しい」より「速い」が優先されるため、こういったミスが頻発したのだ。今回の解析で見られた染色体再編は、膵臓がんの原因として知られている重要な遺伝子(TP53、SMAD4、CDKN2A、ARID1A、ROBO2)の異常につながっていた。また、膵臓がんの発生や進行に深く関わる「ドライバー遺伝子」の新しい候補(KDM6A、PREX2)の遺伝子異常にもつながっていた。

4つに分類

研究グループは、染色体再編のパターンにより、膵管腺がんを4つのタイプに分けた。そしてそれらを「安定型」「一部再編型」「分散型」「不安定型」と名付けた。多くの人は「一部再編型」で、染色体の部分的な増幅が見られた。さらにその増幅した部分の多くには、新薬開発のターゲットとなり得るがん遺伝子(ERBB2、MET、FGFR1、CDK6、PIK3R3、PIK3CA)が含まれていた。「不安定型」の一部の人では、染色体異常により、DNAを安定に維持するための遺伝子(BRCA1、BRCA2、PALB2)は働けなくなり、さらにDNAが壊れた場合に正しく修復できないようになっていた。

タイプ次第で効く薬

抗がん剤「シスプラチン」は、通常、精巣がんや卵巣がんに使われ、膵臓がんにはあまり効果がないとされている。不安定型のタイプの膵臓がんの人にシスプラチンの治療を受けてもらったところ、5人のうち4人で抗がん効果が見られた。今回の研究により、膵臓がんで起きている遺伝子異常のタイプは大きく分けて4つあると分かり、タイプ別に効く薬が適切に選べる可能性も示された。このように遺伝子異常のタイプをプロファイリングし、タイプ別に、現在利用可能な抗がん剤のうち一番効果的なものを正しく選択できるようになれば、膵臓がん治療に新しい窓が開かれるだろうと研究グループは見ている。

文献情報

N.Waddell et al. Whole genomes redefine the mutational landscape pf pancreatic cancer. Nature. 2015; 510: 495-501.

Nature. 2015 Feb 26;518(7540):495-501. doi: 10.1038/nature14169. Research Support, N.I.H., Extramural; Research Support, Non-U.S. Gov’t