ミトコンドリアが抗がん剤の新しいターゲット

ミトコンドリアが抗がん剤の新しいターゲットとして有望である可能性があるようだ。

ミトコンドリアの破壊プロセス

米国バージニア大学の研究グループが、DNAやRNAを含む分子と細胞の分野の専門誌モレキュラー・セル2015年2月5日号で報告した。Ras遺伝子とは、がんと密接に関係すると知られる遺伝子だ。研究グループによると、がんの30%はRas遺伝子の突然変異によって引き起こされるとされる。膵管腺がんについては90%がRas遺伝子の突然変異による。今回のこの膵臓がんをはじめとしたがんの治療につながるミトコンドリアとの関係を研究グループは遺伝子レベルで検証している。ある遺伝子から出てくる分子の「リン酸化」とミトコンドリアの分裂ががんを悪化させるようだ。この経路を解明した。

なぜ壊れるか

Ras遺伝子が突然変異を起こすと、細胞の分裂に関係する「MAPキナーゼ」と呼ばれる、信号の経路を活性化する。ミトコンドリアを刺激して、ミトコンドリアは正常な形を失い、崩壊し、細胞の核の周りに散らばる。結果として、がんが成長しやすい環境を作り出す。さらに、このミトコンドリアの分裂は、Drp1という遺伝子に関係した変化で増強されると分かった。具体的にはErk2というタンパク質が関係して、このDrp1から出てくるタンパク質がリン酸化と呼ばれる処理を受けて変化を起こす。研究グループは、まさにこれが膵臓がんで起こっていると説明する。暴走を止められれば、腫瘍の成長を止めることができる。Ras遺伝子を薬のターゲットするのは難しい(世界待ち望むがんの「ras阻害薬」に「SML」という光明を参照)。ミトコンドリア分裂のプロセスをターゲットとし、ブロックできるのであれば、がん細胞が成長するのを防ぐことができる可能性がある。あくまで基礎的な研究の段階ではあるが、治療につながっていく発見だ。

文献情報

Kashatus JA et al.Erk2 phosphorylation of Drp1 promotes mitochondrial fission and MAPK-driven tumor growth.Mol Cell. 2015;57:537-51.

Mol Cell. 2015 Feb 5;57(3):537-51. doi: 10.1016/j.molcel.2015.01.002. Research Support, Non-U.S. Gov’t