キメラ抗原受容体T細胞療法(CART)

「キメラ抗原受容体」と呼ばれる最新の技術を用いたがんの免疫療法が、驚異的な成果を挙げそうだ。利用した個別化細胞療法が、ほかの治療を散々試した「リンパ腫」「膵臓がん」「多発性骨髄腫」などでがんを消滅させるまでの効果を上げているからだ。米国ペンシルベニア大学アブラムソンがんセンターを中心とした研究グループは、2015年6月1日に米国臨床腫瘍学会(ASCO)で報告した。

「CART」とは何か

キメラ抗原受容体T細胞療法(Chimera Antigen Receptor T therapy:CART)と呼ばれる治療だ。がんが表に出している「抗原」と呼ばれる攻撃のターゲットを確実に攻撃できるようにする。がん細胞の表面に確実に存在する分子を標的にして、がんを殺す細胞である「キラーT細胞」が通常は認識できない大きな分子も攻撃可能とする。遺伝子操作技術を応用して、がんの大きな分子でも探知する「アンテナ」のような仕組みを入れたT細胞を作る。このアンテナを実現するのが「キメラ遺伝子」の導入だ。がんの抗原を探り当てると、信号をT細胞の細胞内に伝えて、攻撃を促す。キメラ遺伝子を受けた人のT細胞の機能が正常であれば必ずがんを殺せるという治療だ。



がんを殺す能力を高める

キメラ抗原受容体を用いた個別化細胞療法では、まずがんになった本人自身の免疫細胞を取ってくる。次にこの細胞は実験室で改変される。がん細胞を探し出し、殺す力を備えるよう訓練を受けた後にがんになった本人の体内に戻される。この改変された細胞には、「キメラ抗原受容体」として知られる抗体に似たタンパク質を含んでおり、がん細胞の表面の標的に結合するように作られている。がんに取り付いて増殖し、がん細胞を攻撃する。今回、関連した臨床試験の結果が報告されている。

病気によっては100%の効果も

この療法の効果は既に慢性リンパ球性白血病および急性リンパ芽球性白血病でも認められており、今回の新たな研究では、2種類の非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫の19人。試験の対象者は、全員が米国食品医薬品局(FDA)承認の複数の治療薬の投与にもかかわらず進行性のがんが認められた人であった。このうち13人で治療に対する効果が見られた。11人は治療に対する完全にがんが消えて、2人はがんが減少した。治療を受けた濾胞性リンパ腫の人では100%の奏効率が認められた(6人が完全に消失、1人が減少)。この結果からは、一部の患者では改変細胞が長期間にわたりがん細胞を攻撃し続けたと見られた。さらに別の研究では、膵臓がんの人に対して治療がなされて、病気の進行が止まる事例を確認できている。キメラ抗原受容体を用いた細胞療法はかねて注目されていた(「がん征圧」の初夢、実用見据える「免疫療法CART」「遺伝子エクソーム解析」、西川伸一を参照)。検証はさらに進みそうだ。

文献情報

Abramson Cancer Center Researchers Report Results from Newest Trials of Personalized Cellular Therapies for Three Cancers.

The latest results of clinical trials utilizing a personalized cellular therapy developed by a team from the Abramson Cancer Center and the Perelman School of Medicine at the University of Pennsylvania will be presented today during the annual meeting of the American Society of Clinical Oncology in Chicago’s McCormick Place.