iPS細胞で癌治療

iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使ったがん治療が、実現へと近づいているようだ。東京大学医科学研究所をはじめとする研究グループが報告したものだ。

iPS細胞でがんを殺す細胞に

東京大学医科学研究所幹細胞治療研究センターの中内啓光教授、安藤美樹日本学術振興会特別研究員RPDらの研究グループが行った研究によるもの。8月28日に同大学が発表した。iPS細胞は「万能細胞」と呼ばれるように、何にでも変われる細胞。大人になった細胞をリセットして作り出す。研究グループはiPS細胞から、がんを攻撃できる「キラーT細胞」を作り出している。iPS細胞の課題は、がんを攻撃する細胞だけではなく、いわば暴走してiPS細胞そのものががんになる心配があるところ。iPS細胞は不要な分は、効果的に取り除く技術も必要になる。

がんを攻撃して自爆

研究グループはiPS細胞から作ったキラーT細胞で動物実験を実行。ネズミの体内にある腫瘍を縮小させた。さらに、キラーT細胞に、細胞の自殺を促す遺伝子を組み込み、薬でその遺伝子をコントロールするという方法を編み出した。使ったのは「アイカスパーゼ9(iCaspase9)」と呼ばれる新しい遺伝子。特定の薬を投与すると、24時間以内に80%以上のキラー細胞は細胞死に導かれて、3日後には検出されなくなった。iPS由来細胞に副作用が現れたとしても、薬を投与することで制御できることになる。この研究成果は、8月27日に再生医学分野の国際誌であるステム・セル・リポーツ誌に掲載された。

文献情報

東京大学の研究グループは、iPS細胞の技術を応用して若返らせたヒトの免疫細胞(T細胞)がマウスの体内で標的の腫瘍を効果的に縮小させることを確認し、さらに使用するT細胞に薬剤で細胞死を誘導できる自殺遺伝子を組み込むことにより、iPS細胞由来T細胞療法の安全性を高めました。本成果により、この治療法の臨床応用に向けた橋渡し研究が加速されると期待されます。

Stem Cell Reports. 2015 Oct 13;5(4):597-608. doi: 10.1016/j.stemcr.2015.07.011. Epub 2015 Aug 28.