抗体療法で免疫ができる仕組み

がんをやっつける「抗体療法」。がんをやっつけるのみならず、がんに対抗する体の仕組み「免疫」の力も引き出すと分かってきているようだ。このたび、この抗体療法で免疫ができる仕組みが解明され、がんの再発防止を強化した治療につながる可能性が出てきている。がん治療で注目される免疫療法だけに、知っておきたい。

がんを攻撃する「抗体」

米国ロックフェラー大学の研究グループが、広範な生命科学分野の有力誌セル誌2015年5月21日号に報告している。抗体は人がもともと持っているタンパク質で、異物にとりついて無力化する機能を持つ。この働きを応用して、特定のがん細胞だけにくっつく抗体を送り込むのが抗体療法だ。従来のがん治療法では、がんをやっつけても治療を止めるとまたがんが戻ってくる可能性があるが、抗体療法ではがん細胞を殺すだけでなく、もう一度同じがんが現れると身体が自然に認識してやっつけるようになる(免疫ができる)とも見られており、期待されている。抗体はY字型をしていて、上のV部分(Fab領域と呼ばれる)が異物とくっつき、下のI部分(Fc領域と呼ばれる)に異物を呑み込んでしまう免疫細胞(食細胞と呼ばれる)がくっつく。一方の食細胞はFc領域にくっつくためにFc受容体というたんぱく質を持っている。研究グループは、ネズミを使った実験で、この抗体が異物をやっつける仕組みを詳しく調べた。

2段階で免疫を強化

その結果、まず抗体は食細胞のひとつである「マクロファージ」が持つFc受容体(FcγRIIIAという)を呼び寄せて異物を殺してもらう。次に別の食細胞で免疫に関わる「樹状細胞」が持つ受容体(FcγRIIAという)を呼び寄せることが判明した。樹状細胞は文字通り、樹木のように足を延ばした細胞で、敵の情報をまとめる役割を果たすと知られている。一緒に免疫を担い、がんを殺す能力を持つT細胞に新たな異物の情報を伝えて、攻撃力を高める効果につながっていく。研究グループは、「現在の抗体療法はがん細胞を殺すことに重点が置かれているが、同時に免疫ができやすくなるように設計すれば、さらに高い効果が期待できる」と指摘する。抗体療法は、使用する抗体が攻撃できるターゲットが限られている。一方のがん細胞は変化する可能性もある。うまく抗体を使いつつ、免疫反応を強化する他の治療法と組み合わせるといった新戦略が可能なのかもしれない。がん治療の進歩は続きそうだ。

文献情報

Research shows how antibodies produce vaccine-like effect against tumors.

DiLillo DJ, Ravetch JV. Differential Fc-Receptor Engagement Drives an Anti-tumor Vaccinal Effect.Cell. 2015;161:1035-45.

Cell. 2015 May 21;161(5):1035-45. doi: 10.1016/j.cell.2015.04.016. Epub 2015 May 11. Research Support, N.I.H., Extramural; Research Support, Non-U.S. Gov’t