新鋭のがん免疫療法、「アクセル全開、ブレーキ全解除」のダブル攻撃、初期の試験で成果

がんを攻撃するのではなく、人間を強くする。そんながんの攻撃力を強める免疫療法に関心が集まっている。「アクセルを全開にして、ブレーキを全解除にする」、言ってみればそんな治療法も出てくる気配だ。初期の試験で成果が報告されており、今後、さらに一般化に向けた動きが進みそうだ。

免疫にアクセルをかける仕組み

米ペンシルベニア大学のデビッド・L・バヨル氏らの研究グループが、米国がん学会の年会で発表したもので、同学会が2015年4月19日に紹介したものだ。研究グループは自転車になぞらえて「ペダルを全力でこぐようにした上で、ブレーキを解除する」と新しい治療のイメージを表現している。免疫とは異物を攻撃するために人間が本来備える機能。その機能を引き出して、がんを攻撃しようという治療だ。ペダルを全力でこぐ、言い換えるとアクセルを全開にするとは、「抗CD-40抗体」という薬を使うことを言っている。開発名を「CP-870,893」と言う。がんを攻撃する免疫細胞の表面に「CD-40」というタンパク質が表に出ている。このタンパク質を刺激すると、免疫細胞の攻撃力を高めるほか、さまざまな効果があると分かってきていた。その刺激を担うのが抗CD-40抗体だ。なお、細胞表面のタンパク質には「CD番号」と呼ばれる通し番号が付けられる。そのうちCD-40というタンパク質に注目していることになる。

注目の「免疫チェックポイント」

一方で、ブレーキを全解除するとは、「抗CTLA-4抗体」という薬を使うことを言う。こちらは免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれる注目の治療の一つだ。Medエッジで継続的に紹介してきた通り、「免疫療法」の一つに位置づけられている。免疫は、体にもともと備わり、感染症やがんをはじめ病気の原因を攻撃する仕組み。免疫チェックポイントは、免疫の暴走を防ぐ仕組みなのだが、がん細胞が悪用すると問題になる。その一つはがん細胞の持つ「PD-L1」と人間の免疫細胞の持っている「PD-1」による仕組みで、免疫にブレーキをかけてまひさせる効果がある。そうなるとがんを攻撃できなくなる。同じようにがんへの攻撃にブレーキをかけてしまうのが「CTLA4」というタンパク質だ。ここでは「トレメリムマブ(一般名)」という薬を使っている。このCTLA4を邪魔するのが抗CTLA-4抗体で、がん攻撃のブレーキを外す効果がある。それぞれの治療が注目される中で、いっそのこと一緒に使おうというのがここでまとめる臨床試験となる。

奏功率は27%

研究グループは、2つの薬を進行した悪性黒色腫(メラノーマ)の24人を対象として検証した。一般への実用化に向けた、最も初期の研究で「第1相試験」と呼ばれる研究となる。まずは適切な用量と安全性を中心に調べるのが目的となる。対象者に対しては12週間おきに抗CTLA-4抗体を投与した上で、3週間おきに抗CD40抗体を投与した。病気の進行や薬の有害性が見られない限り1年間続けた。結果として、追跡期間は平均22カ月になり、全体的な奏功率は27%となった。2人では完全にがんが消えるという効果が表れた。さらに、4人では部分的にがんが小さくなる効果が確認できた。進行の見られない状態の生存期間は平均2.5カ月。平均的な生存期間は26.1カ月となっていた。 副作用が懸念されていたところ、併用でも安全に使用可能だったと伝えている。さらなる効果検証が進むことになる。かつて生存が見込めないようながんでも手立てが増えている。免疫療法の報告は継続的に伝えていく。

文献情報

David L. Bajor et al. Combining Two Investigational Immunotherapy Drugs Safe, With Early Signs of Effectiveness, American Association for Cancer Research. 2015 Apr 19. [Epub ahead of print]