免疫チェックポイント阻害薬の効果は

癌治療で注目を集めている「免疫チェックポイント阻害薬」ですが、癌の放射線療法の効果を増強する働きもあると分かってきました。

現時点ではマウス実験の段階ですが、米国メイヨー・クリニックの研究グループが、がんの免疫研究の専門誌キャンサー・イミュノロジー・リサーチ誌2015年6月号で報告しました。

放射線療法+PD-1阻害薬

癌が多数できている人に放射線療法を行う場合、そのうちの1つの癌に放射線を照射すると、照射していない部分のがんも縮小する効果が見られます。これを「アブスコパル効果」と呼びます。

「アブ=遠く」「スコパル=狙う」という意味です。体を守る免疫の仕組みによってアブスコパル効果が得られると考えられています。癌治療のターゲットとして、最近「免疫チェックポイント」という仕組みが注目されている。

この仕組みに関わっているのが「PD-1」「PD-L1」という対になるタンパク質だ。「PD-L1」は、がん細胞の表面にあるタンパク質。本来は体を守る免疫の働きを暴走させないための仕組みで活躍するが、これをがん細胞は逆手に取って利用します。

がん細胞の「PD-L1」が、攻撃にやってきた免疫細胞の表面にある「PD-1」をつかむと、つかまれた免疫細胞はまひした状態になる。これにより癌は進行しやすくなります。

PD-1がPD-L1と接触できないように邪魔する薬は「免疫チェックポイント阻害薬」と呼ばれる。「PD-1阻害薬」「PD-L1阻害薬」ともに既にがん治療に応用されています。

今回研究グループは、1つのがん組織に放射線を照射する「定位放射線治療(SABR)」の際に、免疫細胞表面のPD-1をPD-1阻害薬などでブロックすると、抗がん効果やアブスコパル効果が増強されるのかどうかをマウスの実験で調べました。

生存が延長

遺伝子操作でPD-1を作れなくしたネズミと正常なネズミを比較。両方のネズミに、皮膚がんの1種である悪性黒色腫(メラノーマ)または腎細胞がんを作らせた。

これらのネズミを定位放射線治療して、治療の効果やアブスコパル効果を比較した。PD-1を作れなくしたネズミの免疫細胞は、がん細胞のPD-L1によるまひ状態が起こらなくなる。

結果、免疫細胞がPD-1を持つ正常なネズミの方が、PD-1を作れなくしたネズミよりも治療後に早く死んだ。正常なネズミで25日以上生きたものは1匹もいなかった。

それに対し、PD-1を作れなくしたネズミの5匹に1匹は40日以上生きた。次にPD-1阻害薬の効果を試した。正常なネズミに「定位放射線治療+PD-1阻害薬」で治療した場合、PD-1を作れなくしたネズミと同様に、治療後の生存期間が延びた。

相乗効果でがんが消失

「定位放射線治療+PD-1阻害薬」では、放射線照射したがんの組織はほぼ完全に消失した。放射線治療単独ではここまで効果が得られなかったことから、2つの治療を組み合せたことによる相乗効果が得られたと考えられた。

また、「定位放射線治療+PD-1阻害薬」では、放射線照射した以外の部分にあったがんも66%縮小し、アブスコパル効果が確認された。メラノーマでも腎細胞がんでも同様のアブスコパル効果が見られたことから、この効果はがんの種類によらず得られると分かった。

活躍する免疫細胞

さらに、これらの抗がん効果で活躍している免疫細胞は、「細胞傷害性T細胞」と呼ばれるリンパ球のうち、「CD11a」というタンパク質をたくさん作るタイプの細胞だと分かった。今回の結果から、定位放射線治療による抗がん効果とアブスコパル効果は、PD-1阻害薬で増強されると分かった。研究グループは、転移したがんの治療に応用できると見ている。

文献情報

Park SS et al. PD-1 Restrains Radiotherapy-Induced Abscopal Effect. Cancer Immunol Res. 2015; 3: 610-9.